第2ステージにおける健康的・活動的なライフスタイル

いつまでも生物学的視点から高齢者を捉えていくべきではない。繰り返しになるが、確かに体力の低下と地位の喪失や社会的役割の現象は事実である。このような事実を事実として受け止めた上で、高齢者はなおかつこの事を契機として、更に内面や人間の価値を高めていく機会を求めている。いろいろな関係性からの離脱現象は免れられないところではある。

人間の成長に合わせた教育のプロセスの中でペタゴジー(子供教育)、アンドラゴジー(成人教育)、ジェロゴジー(高齢者教育)があるが、まさにジェロントロジーはジェロゴジーを基本においたものであるべきで、そこには人間の尊厳と存在が社会との関係性において、最少の単位である家族との別離、即ち「死」というテーマを迎えるまで続く。

このような人生のイロニーの中で、まさに高齢者に対し、生きる力を与えて行く生涯発達というテーマをもってジェロントロジーとしてのジェロントロジースポーツがなくてはならない。何故ならば、人生の安心と安全と楽しさは,健康であってこそ感じ、享受できるものであるから。

アメリカ政府は、このような立場として高齢者を位置づけた上で、Gerontology(加齢学、老年学)という立場を確立させた。日本の高齢社会も、再び高齢者も社会資産として見直していかなければならない。

今、日本でもようやく生涯学習が市民権を得ようとしている現実がある。欧米で幅広く研究実践されているジェロントロジーの概念は、実際、高齢者をエイジングのみで総括するものではない。

エイジングを社会との関係において捉える側面と、生涯発達の関係性において捉える面とに分けて分析してみると、ジェロントロジースポーツ研究所がこれから研究しようというテーマは、生涯発達と生涯学習とにおいて、その主を成す事に核を置くものである。社会と個の関係、あるいは個の完結とにおいて健全である、健康であるというテーゼを研究していくものである。老いてなおかつ健全な自己確立をもつ高齢者は実に多く、その人生を活き活きと生きている。

ジェロントロジースポーツ研究所は、エイジングとジェロントロジーを人生の第2ステ時と位置づけ、自らを自らの知で創出し、自らの手でデザインし「健康で活動的なライフスタイル」を実現するシニアを創出し、活性化してスポーツを通じて、楽しさ、達成感、文化、スキル、エデュケーションのそのテーゼを提案して行きたい。

ジェロントロジーを学び生涯発達として位置づけ、「アイデンティティの再発見の場」と捉えて行くべきと考えている。申し上げるならば、高齢者が新しいライフスタイルを造れる知性と発達した願望をもち、かつまた能力をもっているという視点である。

現代社会は、高齢者に対し社会離脱説や社会的分離、知的道徳的分離等々若者礼讃社会になり、地位の逆転現象が多く見られる。

私たちジェロントロジースポーツ研究所は、高齢者の熟達した知的フィールドをむしろ活用する場の創出が望まれる社会を構築できるものと信じている。

確かに、一般的な概念から高齢者の社会的役割は減少はする。しかし知的フィールドは、人間の価値において向上し、第一線を退いたとしても、その事実を受け止め、その中でなおかつ退職等を1つの契機として、生涯学習を通じ更に別の分野で成長をして行く事が可能であると信じている。

即ちエイジングの多様な在り方を更に学習する事を通じ、最適エイジングの個性化を引き出す発達学習の分野をスポーツする事で刺激し、スポーツを通じて知力のプラグマティックスを活性化させ、自己完結と社会関係を良好な環境にする事がジェロントロジースポーツ研究所の目指すものである。

高齢者が培ってきた知力、熟成した能力に弾力性をもって対応し、生活満足度を高める手段と道筋に対応できる目標の設定をスポーツを通じて維持し健康を持続させ、更にいろいろなスキルを学んでもらう「活動理論」を提供する目的をもって、日本の豊かな高齢化社会に貢献できると思う。